黒澤明の肖像

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クロサワは映画界の世界的なスター監督である。

先ごろオープンした黒澤デジタルアーカイブは、
この監督の偉大な足跡と
この日本映画界最大のスターの光と影を
教えてくれることになるだろう。

こうやって数多くの黒澤明の写真を見てみると、
ヴィジュアル的にはつまらない顔をしているなとつくづく思う。
仕方がない。映画スターではなかったのだから。

クロサワ映画の看板スターは三船敏郎だった。
世界のクロサワと世界のミフネの協力関係が断たれたあと、
黒澤明はCMタレントとしてテレビに登場した。

70年代のテレビCMは、海外の映画スターの時代だ。
アラン・ドロン、チャールズ・ブロンソン、
ここにミフネが入れば『レッド・サン』ということになるのだが、
映画監督の肩書きではあっても、
人のよさそうなたれ目の爺さんとしてではなく、
ブラック・サン(グラス)の象徴的スターとして、
『赤ひげ』の頃から愛用している
黒いサングラスをかけた風格のあるマイスター・クロサワを演じて、
テレビで顔を売った。

御殿場にある自身の別荘内で、
黒いサングラスをかけたまま
机に向かって絵コンテを描いている黒澤明。
一息ついて美味そうにリザーブを口に含む。
ただこれだけの映像とバックに流れるハイドンの交響曲




第94番『驚愕』。

このCMは話題になった。
ハイドンの力が大きいのだが、
映像全体のくつろいだ雰囲気は巨匠の余裕を感じさせ、
威風堂々とした黒澤明のイメージは、
きっと老若男女に印象深く焼きついたに違いない。

私にとっても黒澤明の肖像は、この時のCMのイメージだ。
醜男でも黒いサングラスをかけると様になる。
猫も杓子も真似て、
日本の映画監督にとって
黒いサングラスは欠かせないアイテムになってしまった。

黒澤明は、日本映画界の
ファッション・リーダーだったのである。





©雪柳春雷
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