ZARD 坂井泉水辞典 9

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「ZARD制作チーム」は虚像を作り続けたわけで、
視覚的にもオフィシャル・ブックで
「アーティストの素材撮影」と言い切っているように、
うまく編集して
アーティストに見えるようにしてきただけなのだ。
しかし坂井泉水は、ある時期までは別の方法で
アーティストになることを目指していた。

「友達に手紙を書くときみたいに
スラスラ言葉が出てくればいいのに」

 『Don’t you see!』の冒頭は、
作詞家自身のエッセイ風の文章であり、
別の視点からは
蒲池幸子が坂井泉水に対して
書いているとも取れるだろう。

このような文章を挿入するやり方は、
これ以後坂井泉水の歌詞のスタイルになる。

真実の姿を歌詞の中に投影することで
実像を少しずつ作っていったのである。
作ったという表現は妙に聞こえるかもしれないが、
ZARDの世界ではZARDのイメージという制約があるのだ。
限界点は超えられない。
となると、実像が再び虚像となる前に
ZARDと手を切らなければならなくなる。

ソロになるという選択肢がちらついていた時期の
『Hypnosis』は、作詞家坂井泉水にとって、
ZARDに属してはいても最もZARDらしくなく、
にもかかわらず、
現実の空白状態の紙に
「脳の手帳」に「記憶してお」くはずの
催眠状態の「夢の言葉」(ゴダールの書いた台詞)
を使って書くという最もZARDらしい方法で、
典型的なZARD主義への批判を試みた作品だった。

典型的なZARD主義とは、
明らかに他のアーティストの作品から
ZARD製品を作っているにもかかわらず、
そのアーティストには言及しないことで、
『負けないで』と『ドリームタイム』の
イントロにおける盗作問題が有名である。

しかしながら、
このようなスキャンダラスな手法にもかかわらず、
誰も坂井泉水の詞に興味を示さなかった。

彼女は恥をさらけ出したにもかかわらず、
「ZARD制作チーム」ですら
この作品の意図を理解していない。
そうでなかったら再び『Hypnosis』を
表に引っ張り出してくるはずはない。



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©雪柳春雷
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