ZARD 坂井泉水辞典 4


 Hypnosis
 作詞 坂井泉水

 あなたなしではいられない
 本当のコトを言えば言う程 他の人は嘘だという




































敢えて言うまでもないことだとは思うが、
私は坂井泉水がZARDという組織に怯えて
ゴダールの映画の台詞を書き写したとは思っていない。

坂井泉水は、もともと文章は下手で、
特に比喩の使い方に大きな欠点があり、
一種の現代病でもある
言葉の正しい意味を理解していない傾向もあるために、
たびたび意味不明のものを書いてしまったり、
拙い表現になってしまったりする。

そのような文章と、つぎはぎの関係にある文章、たとえば、

「かの時に言ひそびれたる
 大切の言葉は今も
 胸にのこれど」
(『一握の砂』忘れがたき人人)

この石川啄木の有名な三行短歌をちょいと拝借して、

「あの日言えなかった言葉は今もこの胸の中で眠ってる」
(『遠い日のNostalgia』)

と少々書き変えた文章との配列こそが、
坂井泉水の作家的倫理観の欠如なのである。

オフィシャル・ブックによると
坂井泉水はサビの部分から歌詞を書いたそうだ。
問題となるのは、
このサビの文章とその前後の文章に
明らかな才能の差が存在することと、
この二種類の文章を結びつける作品的血縁関係の不在である。

このサビの一行を読めば
誰だってこの一行だけは石川啄木だと分かるのだ。
本当は三行ある。三行にした理由があることも気に掛けない。

坂井泉水のこのやり方は、引用なら引用と呼んでも構わないが、
アーティストとして石川啄木にオマージュを捧げているわけではない。

『遠い日のNostalgia』は、このタイトルも
「遠くおもひ出づる日」(『一握の砂』我を愛する歌)そのままだが、
石川啄木に倣って坂井泉水自身のことを書いたと仮定しても、
個人的な思い出を美化するための女性的な方法として、
石川啄木を利用しただけである。



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©雪柳春雷
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